君のいる世界
山下さんは私の大きな声に肩をビクッと揺らし、悲しそうに眉を下げた。
「…っ、ごめんなさい。ちょっと色々あったものだから…」
私…最低だ…
山下さんはただ心配してくれただけなのに…
だけど、すぐに顔を上げた山下さんはいつものように柔らかく微笑んだ。
「気にしないで?私でよければどんどん当たってくれていいから」
そう言って、私の隣りに並びフェンスに手を置いた山下さんは、景色を眺めながら静かに話し始めた。
「谷本さん、一年の頃からここに一人で来ていたでしょ?実は私もなの。ここね、私の唯一心が安らげる場所なの。澄み切ったこの空を見ながらお弁当を食べてる時だけが息抜き出来た」
「安らげる…場所?」
「ある日、いつも誰も来ないのに勢いよく扉が開いて、そしたら谷本さんが来たの。さっきみたいにフェンスに肘を付いて空を見てた。私はあっちの日陰にいたからあなたからは見えなかっただろうけど」
「そうだったんだ…」
「誤解しないでね。わざと覗いてたわけじゃないのよ?谷本さんがここでたまにストレス発散で叫んでることは誰にも話してないし、話す気もない」