君のいる世界
「麗奈さん!」
急に肩をポンポンと後ろから叩かれ振り返ると、口元に笑みを浮かべた制服姿の琴音ちゃんだった。
「琴音ちゃん!今日は友達と遊びに?」
「これからバイトなんです。って言ってもこの前みたいなことはもうしてないですよ。知り合いのお弁当屋で」
「そうなんだ!良かったね、バイト決まって!」
「あの日、麗奈さんに助けてもらわなかったら今頃後悔してました。本当にありがとうございました」
琴音ちゃんはそう言って頭を下げた。
顔を上げた彼女は、私よりも数倍大人でしっかりと前を向いて歩いている。
そんな彼女が眩しくて、羨ましい。
「そうだ!そこの弁当、この辺じゃ人気なんですよ!少し寄って行きませんか?」
「え?あ…でも、私今…」
「…そうですよね。麗奈さん、忙しいですよね…ごめんなさい…」
そう言ってシュンと肩を落とす姿がまるで子犬のようで、私の頭の中は罪悪感でいっぱいになった。