君のいる世界
「谷本さんはどうして屋上に来るようになったの?」
「私は…この学園が嫌いだから」
嫌い…
学校なのに洋館のような校舎も、生徒会室にあるシャンデリアも。
休み時間になるとブランドの鞄やアクセサリーの自慢ばっかで、人に優劣をつけて自分より劣ってる人は馬鹿にし、優る人には媚を売るクラスメイト達も。
生徒に頭が上がらない先生達も…
全部くだらない…大嫌い。
「私の周りに寄って来る人はね、私に全く興味はないの。谷本財閥の社長令嬢に興味があるだけ。私は私なのに…」
…誰も私を見ない。
“谷本麗奈”はこの世には存在しないかのように。
空を見上げる。
ポツンと一つだけ浮かぶ孤独な寂しい雲。
まるで私自身を見ているかのようで、目を背けた。
「窮屈で…檻にでも入れられてるような気分になる」
私は鳥籠に閉じ込められたひとりぼっちの鳥。
この家に生まれた時から自由に飛ぶ事は許されず、今ではもう飛び方もわからない。