君のいる世界
コンコン。
「お嬢様。宜しいですか?」
「どうぞ」
私の返事の後、ゆっくりとドアが開き康君が一歩部屋に入ってきた。
私は身体を起こし、ベッドの端に座る。
「お嬢様。お祖母様がお呼びです」
「え?お祖母様が?」
時計は21時を指している。
こんな遅くに私に会いに来るだなんて初めてのことだった。
嫌な予感がする…
「…康君、お祖母様は何て?」
康君は私の問いに、表情を曇らせて視線を床へ落とした。
康君の様子からしても良い話じゃないことぐらい安易に想像出来る。
私はため息を吐き、レースのカーディガンを羽織って康君と部屋を出た。
長い廊下を無言のまま歩く。
祖母は待たされるのが大嫌いだとわかっているのに自然と歩く速度が遅くなる。
だけど、あっという間に応接間の前に辿り着いてしまった。
私はある程度の小言と悪い話を覚悟しつつ、ドアをノックした。