君のいる世界
「失礼します」
ドアを開けると、祖母が満面の笑みを浮かべてソファに座っている姿が真っ先に目に入った。
少し遅くなったのにその笑顔を崩さず上機嫌な祖母に、妙な胸騒ぎを覚える。
その隣りには、脚に両肘を付き手を組んで座る険しい顔をした父親。
またその後ろにはおじさんが姿勢正しく立っている。
「遅くなりまして、申し訳御座いません」
「いいのよ。さ、そこへ座りなさい」
私は祖母の前の肘掛け椅子に腰を下ろした。
今日の祖母はいつもよりお洒落をしている。
お気に入りの一級品の着物。
帯留めは以前亡くなった祖父からの最後のプレゼントだと見せてもらった物で、着物から装飾品まで合わせて総額数千万はくだらないと思う。
祖母はお茶を一口飲むと、私の前に一冊の写真台紙を置いた。
「これは…?」
「まあ、中を御覧なさい」
私は眉を寄せながらも、写真台紙を手に取ってゆっくりと開いた。