君のいる世界
「もしかして私の事もそういう風に見てるの?」
「……」
何も答えられなかった。
図星だった。
山下さんは、他の人と違う。
そう感じても、すぐに信じられるほど、私は素直に出来てない。
本当は信じたいんだ。
私だって友達が欲しい。
放課後、一緒に街に出てカラオケに行ったりショッピングしたり。
恋の話だってしたい。
お昼だって誰かと一緒に食べたい。
だけど、信じて裏切られるのが怖い。
私と山下さんの間に春の暖かい風が吹き抜ける。
ややの沈黙の後、山下さんは「じゃあ…」と振り返り私をまっすぐに見据えた。
「私と一から、友達始めてみない?」
友達を…始める?
「今まで声を掛けて来た人はたまたま“谷本財閥の社長令嬢”に興味があった人ばかりかもしれない。でも全員がそうだとは限らない。“谷本麗奈”に魅力を感じて話してみたいって思ってる人は沢山いるわ」
山下さんは穏やかに優しい笑顔を浮かべると、私の両手を握った。
その手のひらから温もりが身体中に広がって行く。