君のいる世界
「佳菜子!」
私も佳菜子の方へ歩き始める。
するとその時、ぞくりと背筋が震えた。
憎悪に満ちた鋭い視線を感じた気がして佳菜子の後方を見ると、人集りから離れて私を睨む女子生徒の姿があった。
その表情は鬼の形相のようで、視線がぶつかった瞬間に身体が動かなくなった。
真っ黒なひとつ纏めの三つ編みに、黒ぶちメガネを掛けた真面目そうな彼女…
あの子、確か…噂騒ぎの時に佳菜子が先輩に連れて行かれたって教えてくれた村内典子さん…?
あの時も彼女と目が合った瞬間、蛇に睨まれたような不思議な感覚がした。
彼女は一体何者なの…?
パシッ!
突然誰かに手首を掴まれ、スッと金縛りが解けたように身体が自由になった。
「麗奈!」
私の手首を掴んだのは佳菜子で、そのまま私を引っ張って人の間を潜り抜ける。