君のいる世界
ホテルを飛び出した私達は、近くに止めてあった会長の自転車に乗って夜の街を走り抜ける。
私は荷台に横向きに座り、会長の腰に腕を回した。
「ねえ、寒くない?」
自転車に乗る前、会長は自分の羽織っていた上着を私に貸してくれた。
「これぐらい何ともない。それに……奈の………たくない」
「え?何?もう一回言って?」
会長が急に声量を下げた為、何を言ったのか聞こえなかった。
「…だから、麗奈のそんな格好、他の野郎に見せたくない」
「へ?」
想像もしてなかった言葉に、胸がドキッと高鳴った。
後ろから会長を見ると、髪から出た耳が真っ赤に染まっているのがわかる。
そんな会長に、私の胸の中は幸せで満たされていく。
「着いた」
「え…学園?」
「ほら、こっち」
私達は裏門から敷地に入り、一階の空き教室の窓をよじ登った。