君のいる世界
「ここの鍵、壊れてんだ」
「そうなんだ…ねえ、こんな時間に入って平気なの?」
「バレなきゃな」
会長はいたずらっ子のように白い歯を見せて笑った。
その後、すぐに忍び足で教室を出て階段を登り生徒会室に向かった。
足音を立てない為にヒールを脱ぎ、裸足で廊下を歩く。
見つかるかもしれないという緊張感で心臓が早鐘を打っている。
「はあ…緊張した…」
生徒会室に着くと、一気に疲れが押し寄せてきた。
「なかなかスリルがあって楽しめたな」
「私は楽しんでる余裕なんて少しもなかったよー」
会長は「緊張し過ぎ」と笑い、そのままソファのいつもの定位置に腰を下ろした。
「こっち来いよ」
そう言って、会長はまだ扉の前で立ったままの私をジッと見つめてくる。
さっきまでと違う会長の熱い眼差しに、胸が締め付けられる。
私はゆっくりと会長に近付いた。