君のいる世界
ー大輝sideー
「ねえ、聞いた?谷本さんと小出財閥の御曹司のお見合い。羨ましいよね〜」
「私はすでに婚約して、高校卒業と同時に結婚するって聞いたわよ?」
長い夏休みが明けた学園は、この噂で持ちきりだった。
校門にはまだかまだかと谷本麗奈が登校して来るのを待つ生徒達で騒がしい。
俺は興味ない振りをして昇降口に向かった。
すると…
「きゃあーー!!」
突然生徒から歓声が上がり、振り返ると校門をすぐ入った所に大きな人集りが出来ていた。
たまに谷本麗奈の困惑した表情が人集りの隙間から見える。
拳をきつく握り締めて、皆が外へ出て行く中、一人校舎に入って行った。
俺は教室には行かず生徒会室に向かった。
乱暴に鞄を机に置いてソファに横になる。
そして夏休みのある夜の事を思い出した。