君のいる世界
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8月下旬。
親父の墓参りに行った帰りに国道沿いで信号待ちをしていると、谷本麗奈が反対側の歩道を見たことない男と歩いていた。
二人は立ち止まり、向き合って何かを話している。
男が頭を下げると、谷本麗奈は慌てた素振りを見せた。
そしてその後、二人は仲睦まじく笑い合っていた。
俺は信号が青になっているにも関わらず、足に根が生えたようにその場から動けなかった。
あいつが誰といようと、俺には関係ない。
傷付けてまで、あいつを遠ざけたのは自分…
それなのに、俺の頭の中に凄いスピードで真っ黒なモヤが広がっていく。
唇を強く噛み締める。
そいつ、誰だよ…
何で違う男と楽しそうに笑ってんだよ。
そいつのことが好きなのか…?
お前が好きなのは……俺だろ…
俺じゃなきゃ許さない…!
俺は意を決し、あいつの元へ駆け寄ろうと一歩踏み出した…その時ーーーー。
「危ない!」