君のいる世界
「ううん。大輝、多分バイトだし…そんな話はしてないよ」
「えー!!駄目ですよ!!付き合って初めてのクリスマスなのに!!ったく、お兄ちゃんったら何考えてんだか」
そう言った琴音ちゃんは大きな口を開けてハンバーガーにかぶりついた。
私は苦笑いを浮かべながら、ふと窓の外に目を向けた。
今日はクリスマス前の最後の休日。
若いカップルやお年寄りの夫婦がファーストフード店の横を仲睦まじく通り過ぎて行く。
「いいな…」
そんな姿を見て、私は無意識にポツリと呟いていた。
「…麗奈さん。少し我が儘言ってもいいと思いますよ?」
「え?」
「クリスマスぐらい一緒にいて!って」
「そんな事…言えないよ。バイト忙しいみたいだし。重荷になりたくないもん。それに…」
我が儘言って、大輝に嫌われたくない…