君のいる世界
「そんな顔しないで下さい。私なら大丈夫です!こう見えてお兄ちゃんより強いんですよ!」
琴音ちゃんはそう言って両手でガッツポーズをして見せる。
その笑顔が少しだけ切なげで、ズキっと胸が痛んだ。
「…だけど、最近のお兄ちゃんは少し変なんです。ぼーっとしてることが多いっていうか…」
それは私も思い当たる節があった。
名前を呼んでも反応がなくて、生徒会会議の時も上の空。
眉間に皺を寄せて、何か考え事をしているような感じ。
あんな事実を聞かされた後だし、まだ気持ちの整理が出来ていないんだと思うんだけど…
「だから、麗奈さん!!お兄ちゃんのこと、宜しくお願いしますね。あんなお兄ちゃん、気持ち悪くて。さ、戻りましょう!」
琴音ちゃんは二カッと白い歯を見せて笑った。
きっと琴音ちゃんも大輝と同じ。
だけどそれでも必死で笑って元気でいようとしてるんだ。