君のいる世界
「ちょ、ちょっと!」
私の前を横切り昇降口に向かう会長の背中を咄嗟に引き止めた。
会長はピタッと足を止めると怠そうに振り向き、光のない瞳で睨みつけてくる。
「…うっ…」
怯むな、私!
ゴクッと喉を上下させて、ざわつく心を落ち着かせた。
「あの…ね、聞きたいことがあって…その…」
「…っんだよ。ハッキリ言えよ。それとも」
会長はツカツカと私の目の前まで来ると、私の顎をグイッと上げた。
「またキス、されたいの?」
艶っぽい声としっとりとした眼差しに、心臓が張り裂けそうなぐらい跳ね上がった。
変に会長の薄い唇に目がいってしまう。
この唇に、キスされたんだ…
私、おかしいよ…
まだキスもされてないのに唇がジンジンするなんて。