君のいる世界
「わかってます。しかし、麗奈は私の娘です!!麗奈が傷つく事をする人に、麗奈は任せられません!!」
お母さんの声が店中に響き渡った。
もう…私はその言葉だけで十分だよ…
私の我儘で大輝の家族も、この店もめちゃくちゃにするわけにはいかない。
私が言う通りにすれば、皆は今まで通り暮らしていける。
なら私は、この身を谷本財閥に捧げよう。
ありがとう。
大好きだよ…お母さん。
一緒に暮らしたかったけど…ごめんね。
「お祖母様に従います」
「麗奈!!」
「お母さん。私は大丈夫だよ。ただ数ヶ月前の生活に戻るだけだから」
あの最悪な日々に戻るだけ…
「お祖母様、約束して頂けますか?大輝の家族にもお母さんにも勿論この店にも、何もしないこと」
「あなたが言う通りにすれば、約束しましょう」
「では、すぐにさっき連れて行ったお客様も離して下さい」
するとお祖母様は不敵な笑みを浮かべながら秘書に合図するように右手を振り上げた。
「これであの方も自由です」
店の外をちらっと見ると、集まった野次馬の中に常連のおじさんの姿を見つけた。