君のいる世界
「あと一つだけお願いがあります。明日一日時間を下さい。お願いします」
私は深々と祖母に頭を下げる。
本当はそんなことしたくないけど、こうするしか方法がない。
「…明日一日ですよ」
「ありがとうございます」
私は頭を上げると、身につけていたエプロンを外し後ろを振り向く。
琴音ちゃんは目に涙を浮かべている。
「琴音ちゃん。大輝にはこのこと言わないでくれるかな?心配させたくないの」
「麗奈、さん…っ…」
「今までありがとう。ずっと家族仲良く…幸せになってね」
「…ゔっ……嫌……お兄ちゃんは…麗奈さんしか…い、いない…のよ……」
「…ごめんね」
琴音ちゃんの手をギュッと握ると、私はお母さんに体を向けた。
お母さんは眉を寄せて、辛そうな顔で唇を噛み締めている。
「…お母さん。私、少しでもお母さんのこの弁当屋で働けて幸せだった」
「麗奈…」