君のいる世界
「あれ?門のとこに警備員配置したんだ?」
さっき麗奈に挨拶してきた人物は、眉毛が太く強面の警備員だった。
「あ…そうなの。最近物騒だからって…祖母が……あのね、ちょっとここで待っててくれる?」
麗奈はそう言うと、走って家の中に入って行った。
今、なんかはぐらかされた気がする。
さっきまであんなに良い雰囲気だったのに…
ふと視線を感じて顔を向けると、警備員が鋭い目付きで俺を睨んでいた。
何なんだよ…
気になる事が多過ぎて苛々する。
俺はポケットに入れた手を、苛々を抑え込むようにギュッと握った。
数分後、麗奈は紙袋を大事そうに抱えて駆け足で戻ってきた。
「これ…その…クリスマスケーキなの」
「え?ケーキ?」
「この前、お前が焼いてくれんだろって言ってたでしょ?だから…」
麗奈は赤くなった頬を隠すように俯き加減に言った。