君のいる世界
「まじで?」
そんな事まで覚えてくれてたんだ。
そう思うと、さっきまで苛々していたのが嘘のように心が温かくなっていく。
「なら、今から一緒に食べようぜ」
「あ……ごめん。私、そろそろ帰らないと…そのケーキはご家族で食べて?その為に大きく作ったの」
麗奈はちらっと警備員の方に目を向けた。
警備員は相変わらず俺を睨んでいる。
「そっか…もうこんな時間だしな。これは家族で戴くわ。本当、サンキューな。じゃあ、俺はこれで」
「あっ…大輝……」
「ん?」
「…ううん。何でもない…今日は素敵な思い出をありがとう」
「それは俺の台詞。風邪引かないように暖かくして寝ろよ」
俺は麗奈の頭を撫でて、まだ一緒にいたい気持ちを抑えて歩き出した。
俺の背中に向かって、麗奈が「さよなら」と呟いていることも知らずに…