君のいる世界



12時。


私は家の近くにある祖母の屋敷のインターホンを鳴らした。


すぐに秘書が出て来て、私を屋敷の中に招き入れる。




祖父が生前、この屋敷を建てる時に一番こだわった柱には上質な檜が使われていて、家中にその匂いが染み付いている。


以前遊びに来ていた時はこの匂いに癒されていたけど、今は到底そんな気分になれない。





「奥様。お嬢様がお見えになりました」



「どうぞ」



祖母の返事を待って、秘書が応接間の襖をゆっくりと開ける。




「え……?」



私は中の様子を見て驚いた。


てっきり中には祖母しかいないものだと思っていたけど、 祖母の目の前には見知らぬご婦人と同い年ぐらいの男の子が座っている。




「何をしているんです?早くこちらへ座りなさい」



「あ…はい」



私は意味がわからないまま、祖母の隣りに腰を下ろした。




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