君のいる世界
「け、恵介さんはこの話に納得しているんですか?」
私がジッと見つめると、恵介さんの眉間には更に深い皺が刻まれ、ふいっと視線を逸らされてしまった。
「麗奈さん。このお話は我が本条グループにとって願っても無いこと。それは将来、本条グループを背負っていく恵介にも当然わかっていることです」
ご婦人は乾いた笑みを浮かべながら、淡々と言葉を紡いでいく。
そうか、彼も私と同じなんだ…
鳥籠の中に閉じ込められ、生まれた時から自由に羽ばたくことを禁じられた孤独な鳥。
そしてこのご婦人は、会社の為、お金の為なら息子を犠牲にすることなんて何とも思わないような祖母と同じ冷たい人間。
隣りに座る息子の表情を、この人はちゃんと見たことがあるのだろうか。
初対面の私でさえもわかる。
彼の気持ちが痛いぐらいに…
応接間にはご婦人の「ほほほ」という笑い声が響く。
気分が悪い…