君のいる世界
それから数日が経ち、新年を迎えた。
家には新年の挨拶で多くの来客があり、又、元日の夜は毎年谷本財閥の子会社の社長が全て集まって盛大な新年会が行われる為、その準備で家中がバタバタしていた。
私も本当なら挨拶に応接間へ行かなければいけない。
だけど、どうしてもそんな気分になれなくて、私はこっそり家を抜け出した。
時刻は11時。
空を見上げると、透明感のある綺麗な水色が一面に広がっている。
空気は冷んやりとしているけど、今の私にはそれぐらいがちょうどいい。
気候が暖かいと気が緩んで弱音を吐きたくなるから。
コートのポケットに手を入れてマフラーに顎を埋め寒さを凌ぎながら、私は当てもなくただ只管歩いた。
近所の家の門の前には門松が飾ってあったり、ドアにしめ飾りが飾ってあったり、住宅街は正月色に染まっている。
この家もその隣りの家も、御節とお雑煮を机に並べて、子供はお年玉をもらったりして楽しい時間を過ごしているんだろうな。
私は家の近くにある小さな公園に足を踏み入れた。
いつもは小さい子が元気に遊んでいるけれど、今日は元日だからか誰もいない。