君のいる世界
「あ、中澤さん。おはよう」
佳菜子の言葉にドキッと胸が跳ね上がった。
「…おはよう」
明らかに不機嫌な声の大輝。
怖くて振り向けない…
ジワリと冷や汗が滲む。
「私…先に行くね…」
私はなるべく早くそこから立ち去りたくて、二人に背を向けて歩きだした。
「麗奈!?」と、佳菜子の焦った声が聞こえる。
だけど振り返らない。
振り返っちゃいけない。
私は大輝を一度も見る事なく、なるべく平然たる態度を装ったつもり。
佳菜子には後で大輝とは別れたって、遊びだったと伝えればいい。
それで佳菜子に軽蔑されればいいんだ…
これからの私の人生には、愛情も友情も必要ない。
だから…
私を早く、嫌いになって…