君のいる世界
「佳菜子。大好きだよ」
「ど、どうしたの?急に」
佳菜子は照れを隠すようにコーヒーカップに口をつける。
カップとコーヒーの白い湯気が佳菜子の揺れる瞳と緩んだ口元を隠しているけど、赤くなった頬は丸見えで何だか凄く可愛く思えた。
「ふふ。言いたくなっただけ」
「馬鹿…せっかく…止まってたのに…」
「もう!佳菜子ったら、意外と泣き虫なんだから」
私は嬉し涙を流す佳菜子に貸す為に、鞄の中からタオルを取り出した。
バサッ。
「あ…手帳が…」
学園でぶつかった子の手帳がタオルに挟まっていたらしく、床に落ちてしまった。
私はそれを拾い上げ、埃を落とすように軽く叩く。
「写真落ちたよ?…あれ?これって神崎里緒奈ちゃん?」
佳菜子は頬を流れた涙を拭うと、足元に落ちた写真を拾いながら首を傾げた。