君のいる世界
恵介さんと初めて祖母の家で会った時、彼は始終眉間に皺を寄せていて納得いっていないようだったし。
私は二人の幸せを壊してしまったのかもしれない…
自分の大事な物を守るために、お祖母様の言う通りに本条グループとの婚約を泣く泣く了承した。
だけどそうしたことによって、違うところで誰かを傷付けてしまっていたんだ…
自分が良ければ他の人が傷付いていいわけないのに。
私は自分のことしか考えてなかった。
「麗奈?」
「私、お祖母様にはっきりと言う。本条グループとの婚約を白紙に戻すように」
私が弱いからこんな風に皆を巻き込んでしまった。
もうこれ以上、誰も傷付いてほしくない。
写真を手帳に大事に挟み直して、彼女の顔を思い出しながら表紙をジッと見つめる。
今度は写真のような二人の幸せな笑顔が見れるといいな。
私は手帳を鞄に閉まって、その後佳菜子と店を後にした。