君のいる世界
愛してくれてありがとう
静まり返った応接間に、庭にあるししおどしの竹筒が石を叩く音が周期的に聞こえてくる。
上質な竹筒が奏でる音は、本来なら胸に響いて疲れた心を癒してくれるけど、今のこの状況ではその癒しの効果は全く期待できない。
私の心臓は他の人に聞こえてしまいそうなぐらいドキドキと激しく音を鳴らし、手には汗が滲む。
喉はカラカラに渇き、ピリピリとした空気に飲み込まれてしまいそう。
「…珍しい客人を連れてきましたね」
祖母は上品に熱いお茶を啜った後、湯呑みを静かに受皿に置きながら冷ややかな声で言った。
そして湯呑みに落としていた視線をジロッと上げて、斜め前に座る大輝を鋭く睨みつける。
私はその怒りに満ちた瞳に、思わず息を呑んだ。
「先程、本条グループから婚約破棄の連絡がありました。原因はあなたですか?」
「お祖母様、それは私が説め……「「あなたは黙ってなさい!!」」
祖母は癇癪を起こしたように、私の言葉を遮って声を荒げた。