君のいる世界
「そんな甘ったれた事を言っていたら、すぐに足を掬われますよ。あなたが何をしようが関係ありませんが、うちの麗奈を巻き込まないで頂きたい。この子は谷本財閥の大事な一人娘です。谷本財閥のために身を捧げ、将来を担う跡取りを産むという大事な役目があります」
祖母はそう言って、再びお茶を啜った。
その淡々とした口調と当たり前に言い放った言葉に、悔しさと憤りを感じる。
祖母は私を跡取りを産む道具にしか思ってない。
それは昔からわかっていたけど、こうやってはっきり言われたのは初めてだった。
膝に置いた手をギュッと握る。
今にも震えそうな身体を抑えるようにきつく…
「お言葉ですが、麗奈はあなたや会社の為の道具でも操り人形でもありません。麗奈は社長令嬢である前に一人の人間です。これ以上麗奈を傷付ける奴がいたら、それが誰であっても俺はそいつを許さない」
大輝と祖母の間には、火花が散り険悪な空気が漂っている。
自分のことなのに、私はその空気に圧倒されてその様子をただ傍観することしか出来ない。