君のいる世界
その感覚を敢えて言葉にするならば、安心感とか安らぎ。
唯一、気が許せて弱い自分を曝け出せる場所。
私にとって大輝がそんな存在であるように、お母さんにとって父親がそういう存在なんだ。
「その日、一緒に夕飯を食べて離婚してからのことを話した。麗奈のことや会社のこと。それから…大輝君のお父様の事故のこと」
お母さんの言葉に、大輝が「え…?」と驚きの声を上げた。
そして何かを考えるように口を閉ざし、お母さんをジッと見据える。
「…朱美さんは親父の事故のこと知ってたから、俺や琴音に良くしてくれたんですか?」
ややあって、大輝が掠れた声でそう問うと、お母さんは直様「それは違う!」と打ち消した。
「琴音ちゃんがうちでバイトを始めるまで、大輝君や琴音ちゃんが中澤さんのお子さんだって全然気付かなかったの。お父様とは何度もお会いしたことあったけど、ご家族とは麗奈がまだ4歳ぐらいの時に一度お会いしただけだったから」