君のいる世界




「朱美さんがそんな気持ちで俺達と接してたなんて端から思ってなかったけど…でも、今の答えを聞けて嬉しかったです」



大輝はそう言って、本当に嬉しそうに口の端を上げた。




以前、大輝がお母さんのことを「親父と雰囲気が似てる」って言ってた事があった。


だから不思議と何でも相談してしまうんだって。


それぐらい大輝はお母さんのことを信頼してる。


だから、もし今までの事が同情心故の優しさだったとしたら、大輝はショックを隠しきれなかったと思う。






「それから何回かお父さんと食事していくうちに、私の当時の状況も話すようになったの。そしたらお父さん、俺が援助するって言ってくれて…最初は断り続けてたんだけど。過労で倒れて病院に運ばれた時、俺には甘えてもいいんだって涙ながらに手を握ってくれて」



父親はお母さんの横顔を愛おしそうに見つめている。


この人もこういう顔するんだ…


離婚してからこの人の笑顔どころか、喜怒哀楽全ての表情を見なくなったからすっかり忘れてたけど、優しくて柔らかな笑顔はやっぱり祖父に似てる。





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