君のいる世界




父親とお母さんは、離婚した後もずっと想い合ってたんだ。


二人の気持ちがわかった途端、私の心の中が暖かくなった。





すると、ずっと黙って話を聞いていた父親が口を開く。




「朱美は偶然再会したって言ってたけど、偶然なんかじゃないんだ。私はずっと朱美を忘れられなかった。情けないことに、仕事が手に付かないぐらいに」



「あなた…?」



お母さんは言ってる事がさっぱりわからないと言わんばかりに首を傾げている。



「そんな私を見兼ねて、柳田が朱美を探し出して俺に居場所を教えてくれた。会うか会わないかは好きにしろってな」



父親は「柳田には本当に敵わない」と苦笑いを浮かべた。




「谷本財閥の社長として周りから認められたら会いに行くって決めたんだ。結局、二年も掛かってしまったけど」



そう言った父親は座椅子から降りると、隣りに座るお母さんの方を向いて正座し直した。




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