君のいる世界




「朱美。やり直さないか?麗奈と家族三人で、もう一度ゼロから」



「あなた…でも…」



「誓うよ。絶対に幸せにする」



父親はスーツのポケットから手のひらサイズの小さな箱を取り出し、お母さんに向けて蓋を開けた。


離婚前に嵌めていた結婚指輪だろうか、ピカピカに磨かれたシンプルな指輪が二つ、蓋が開かれるのを待ち望んでいたかのように並んでいる。




お母さんの震えた唇からは微かに吐息が漏れ、白い頬を幾つもの涙が伝った。


感極まって言葉にならない様子のお母さんの背中を、すぐ側に座っていた祖母が優しく摩る。


二人の成り行きを穏やかな表情で見守りながら…





私まで鼻の奥がツンとして視界が滲む。


涙が零れないように天井を仰ぐと、膝に乗せていた手に大輝の大きな手がそっと重なった。





お母さんは言葉の代わりに何度も何度も首を縦に振り、涙でぐちゃぐちゃになりながらもキラキラ輝いた幸せそうな笑顔を見せた。





「麗奈も、許してくれるか?」



父親が私の顔色を窺いながら、恐る恐る聞いてくる。


そんなこと聞かなくても、私の答えは決まってるのに。





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