君のいる世界
授業参観は、毎回両親ではなくトミさんと康君が来てくれた。
それはそれで嬉しかったけど、本当は二人にも来てほしかった。
作文の題材が【わたしのお父さん、お母さん】だった時、何も書けずに白紙のまま提出した。
夕日を背に、両親に挟まれるようにして手を繋いでる幸せそうな同級生を見た時、凄く羨ましくてそれが私の密かな夢になった。
学年が上がるごとに卑屈になってく自分が嫌で嫌で堪らなかった。
お母さんに会いたい。
お父さんに笑ってほしい。
その想いを言葉に出来ないまま、心の奥底に閉じ込めた。
「私はね、こんなに裕福で大きな家じゃなくてもいいの。小さくても、お金が無くてもお父さんとお母さんがいてくれたらそれだけで幸せ。こたつに入ってみかんを食べながらテレビを見たり、小さい机で一つの鍋を皆で囲ってつついたり、夕方になると家の中からカレーの匂いがしたり。ずっとそんな家庭を夢見てた」