君のいる世界
「…うっ、わかりました…」
完璧に負けた…
あんな目で見つめられて「嫌だ」って言える勇気がある人がいたら見てみたい。
おばさんは「よしっ!」と納得した様子で私の手を離した。
「それとお兄ちゃん!私は女の子を送らないような冷たい男に育てた覚えはないぞ!」
両手を腰に当てて仁王立ちしながらそう言い放つおばさん。
そんな勇ましいおばさんに、
「ゔっ…はぁ…わかったよ。送ってけばいいんだろ」
さすがの会長も弱いらしい。
「それでこそ我が息子!」
それが凄く微笑ましくて、つい声を出して笑ってしまった。
「おい、何が可笑しいんだよ?」
「ふふふ。だってなんか、会長可愛いんだもん」
「…うっせぇ」と言った会長は、拗ねたように顔を真っ赤にして目を逸らす。
会長の真っ赤な顔と伏せた瞳に、胸がドキッと痺れるように震えた。