君のいる世界
私は夕方の事を会長に話した。
琴音ちゃんを裏切ってるような気持ちになったけど、これは家族の問題。
会長は知っておくべきだと思った。
「あいつ…そんな事考えてたのかよ」
ずっと黙って聞いていた会長は、全てを話し終えると嘆きに沈んだ。
「私が口出しする事じゃないけど、琴音ちゃんを怒らないであげてほしいの。おばさんと会長のこと想ってやったことだし、もうあんな事絶対にしないと思うんだ」
琴音ちゃんを私が中澤家を出るとき、「今日はありがとう」って一番の笑顔を見せてくれた。
あの笑顔は本物だと思うから。
「ああ、わかってる。ただこれだけは言わないと気が済まない。俺も母さんも負担だなんて思ってないし、いない方がいいだなんて絶対考えんなって」
会長は満月を見上げた。
月の光が会長を照らす。
長い睫毛、薄い唇、スッとした顎のライン。
キラキラ光る黒い瞳。
純粋に綺麗だと、思った。