君のいる世界




俺らがこんなにも辛い思いをしてるのに、なんであの男は今も優雅に暮らしてんだよ。


俺はあの男だけは絶対に許せない。


だから俺は、この気持ちを認めちゃいけないんだ。






翌日、バイトから帰るといつも真っ先に玄関に走ってくるチビ二人の姿がなかった。


不思議に思い急いで二階へ上がると、妹と楽しそうに話す谷本麗奈がいた。




「お前…何してんだ?」」



「か、会長…?…え?なんでここに?」



目を見開いて驚いてる様子を見ると、ここが俺の家だって知らなかったらしい。



「おれが聞いてる。どうしてお前がうちにいんだよ…?」



「お兄ちゃん!そんな言い方失礼だよ!麗奈さんは私を助けてくれた恩人なの」



話を聞くと、琴音が駅前で具合が悪くなった所を助けてもらったらしいけど。


琴音の奴、こんなにはしゃいでんのに本当に具合悪かったのかよ…




そもそも駅前に何の用事で行ったんだ?


人見知りで初対面の人に懐かない琴音がこんなにも心開くなんて、絶対に他の理由があるはず。


だけどいくら琴音に聞いても、本当に具合が悪かったの一点張りだった。



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