君のいる世界
夕飯の後、母さんの命令で谷本麗奈を送ることになった。
「あのさ、本当はあいつ具合悪かったわけじゃないんだろ?」
あれからずっと琴音を観察してたけど、いつも以上に飯食ってたし。
絶対に何かある。
「え?」
「あんなにピンピンしてんのに。一体何があったんだ?」
なかなか口を割らない谷本麗奈は、琴音の事を気にしてるようだった。
本当は谷本家の人間に頭を下げたりしたくない。
だけど、そんなプライドよりも家族の方が大事。
琴音に何かあったなら知っておきたいし、もし困ってたら助けてやりたい。
「頼む。教えてくれないか?」
谷本麗奈は重い口をゆっくりと開いた。
琴音が俺や母さんを想って援助交際をしようとしていたこと。
自分はいない方がいいと思っていたこと。
谷本麗奈の口から出た話は、胸を衝くような内容だった。
「あいつ…そんな事考えてたのかよ」
俺は満月を見上げた。
谷本麗奈がいなかったら琴音は今頃傷付いていたかもしれない。
俺は琴音を不安にさせた。
家族を守るとか偉そうなこと言って、守れなかった。