君のいる世界
「そんなことよりお嬢様、今まで何方に…?」
「…へ?…あっ、えっと…」
今まで男の人の家に、しかも会長の家にいたなんて言わない方がいいよね…?
私は康君から目を逸らし、脱いだ靴を揃えながら言った。
「…たまたま会った学園の女の子のお家に遊びに行ってたの…私、疲れたから今日はもう休むね!」
私はそれ以上何も聞かれないように、階段を駆け上がった。
ーーーーーバタンッ!!
自室のドアを勢いよく閉め、そのまま寄り掛かる。
まだ身体が熱い…
思い出すだけで胸が張り裂けそうなぐらいドキドキして、頬に熱が帯びていくのがわかる。
私は自分の身体をギュッと抱き締めながらその場にうずくまった。
数十分前…
私と会長は閑静な住宅街を並んで歩いていた。
辺りは街灯と家から漏れる灯りのみでやや薄暗い。
一人だと不安な夜道も、会長と一緒だと怖くなかった。
今日の私は少しおかしい。
からかわれるし、お前みたいな女嫌いだなんて言われるし、キスされるし…
つい最近まで会長のこと大嫌いだったのに。