君のいる世界
康君は私の両親が離婚してから7年間、ずっと執事兼専属運転手をしてくれている。
それからというもの、康君は私を“お嬢様”として見るようになった。
気が付いたら私達の間には高い壁が出来て、あの頃の優しいお兄ちゃんはいなくなってしまった…
仕方が無いのはわかってる。
私は雇い主の娘で、康君はきちんと仕事をこなしているだけ。
だけど、それが寂しかった。
私の周りにいる人達は、私を“谷本財閥の社長令嬢”としてしか見ない。
近寄って来るのは谷本財閥に興味があって、なんとか社長である父親に取り入りたい人だけ。
私はただの胡麻を擦るだけの道具。
私を私という一人の人間として見てくれる人は、今ではもうトミさんただ一人。
昔は康君もその一人だと思ってたのに…
結局、康君も他の人と同じ。
私は車の窓から早々と過ぎ去る街並みを眺めた。
二人乗りをしている高校生のカップル。
数人でカラオケに入って行く女子高生。
私には未知の世界。