君のいる世界
「…え?本当の話だったの!?」
私の反応に山下さんは目を見開いた。
「違っ!!あれはキスじゃなくて…ただ…」
「ただ…?」
山下さんはジリジリと目力で私を追い詰めてくる。
キスされるかと思ったなんて…言えないよ。
「そ、そう…埃よ!髪に付いた埃を取ってくれてただけで…キ、キスなんて…」
山下さんは私の目を瞬き一つせずに、じっと見つめてくる。
その眼差しは可憐な彼女からは想像がつかない程の迫力で、心の奥まで見透かされそうだった。
思わず目が泳いでしまう…
「…ふぅ〜ん。それならいいんだけど」
まだ納得してないようで、拗ねたように唇を少し尖らせた。
そんな山下さんも美人に見えてしまうから凄い。
「ただ凄い噂になってるから会長に誤解されないといいけど」
「そんなに噂広まってるの…?」
「そりゃそうよ。学園一人気者の谷本さんと密かにファンクラブが存在する執事の柳田さんのスキャンダルだもの」
…ん?ファンクラブ??
「…え、康君の…ファンクラブ?」
きっと今、漫画の一コマだとしたら私の頭の上には?マークが飛びかってると思う。
だって、康君のファンクラブがこの学園に存在するなんて…信じられないもん。