君のいる世界




昼休み終了の鐘が鳴り、私達は屋上を後にした。


教室に戻る途中、廊下を歩く生徒は私を赤ら様に避けていつもと違う痛い視線を浴びせてくる。


昼休みまで全くこの異様な雰囲気に気付かなかったなんて、自分の呑気さに呆れるほどだった。




「ほら!谷本さんよ…今朝キスしてたんだって…」



「可愛い顔してやることはやってるのねぇ…いやらしいわ」



あ、あの子…


私にやたらと付き纏ってくる子だ。



「…っく…私、康介様のこと好きだったのに…ひっく…あの二人、付き合ってるのかな…」



「大丈夫よ…付き合ってるわけないじゃないって」



あの子も…そこの子も…


皆、今朝まで私に媚び売ってきてた子ばっか…




毎日不自然なくらい笑顔を振りまいて近付いてくるのに、今は鬼の形相のように恐ろしい目つきで私を見てくる。



「谷本さんは特定の男は作らないって噂よ…康介様もきっと遊ばれてるんだわ」



「運転手にまで手を出してるってこと?信じられない…」



ズシンと重りがのしかかるように胸が痛い…


噂がひとり歩きを始めているようだった。




どうして…


どうしてこんなこと言われなくちゃいけないの…?




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