君のいる世界
途中、私の足音に気付いた先生が勢いよく教室のドアを開けたけど何も言わなかった。
私が谷本財閥の娘だから…
この学園の先生は、私みたいに家が大きい生徒には何も言わない。
もし機嫌を損ねるようなことをしたら自分の立場が危うくなる。
学園長も多額の寄付金を打ち切られないように、定期的に機嫌取りにくるし。
そんな先生達も嫌い。
だけど、今はそれが有難くも感じてしまう。
今は一刻も早く山下さんの所へ行きたい。
こんな所で足止めをくらうのはごめんだから。
ーーーーガラガラガラ、ガチャン!!
「山下さんっ!!」
山下さんのクラスの後ろのドアを思いっきり開けた。
クラスにいた先生や生徒が一斉に振り返り注目する。
「谷本さんよ…噂聞いた?」
「俺も遊びでいいから構ってくんねぇかな」
ヒソヒソと彼方此方から噂話が聞こえてくる。
視線が突き刺すように痛い。
これは噂話の域を超え、もはや中傷。
噂のひとり歩きは止まる所を知らないみたいだった。
だけど私はそれに構うことなく教室を隅から隅まで見渡した。