† of Ogre~鬼の心理

第十八節

† 第十八節



現場に膝を折り、壁に飛散した血痕や、取り残された赤い傘、ここに落ちているのに小さな違和感がある鋏などを順々に指差してから、内村はこちらを向いた。

「さすがアルさんですね。こうもさっさと見つかるとは思いませんでした」

「僕も驚いてるよ。まさかこんなに現状が残ってるなんてね」

という言葉は嘘で、実は単に、あちこちをわざと右往左往してからやって来た、真輝ちゃんの食事場だ。

いや、正確には狩り場か。

彼女は狩猟した獲物を、その場ではいただかない。

殺すための意識と、食べるための意識は別物だそうだ。

その空気をない交ぜにするのは彼女にとって、フレンチの順番をめちゃくちゃにして出されるほど、あってはならないことだろう。

家に上がる時には靴を脱ぐ。場面場面で応変する日本の特色というわけだ。
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