† of Ogre~鬼の心理
僕としては、殺しの空気と食事の空気を混濁させた、あの背筋もぞくぞくするような緊張感と、足元から水が吸い出されるような冷ややかな高揚、口から入ってくる甘美さで陶然とする時間がたまらないのだけど……

やはり、種族の違いというのは大きいらしい。

彼女にこれは理解してもらえないし、僕も彼女のそこまでを理解できない。

対立とは違う、ただ、存在としての差異だった。

「早速鑑識にここを伝えます。目には見えない証拠も残ってるかもしれないですしね」

「君は行動が迅速で助かるね。頼むよ」

ケータイを取り出す内村に報告は任せ、僕は周囲の気配を探索してみた。

中心街は、買い出しの時に用心していたのか、至るところに仁の気配が残留していた。

恐らく、彼女お得意のマーキングだろう。

魔法と魔術、両方を使う、どちらかといえば魔法使い寄りの彼女は、マーキングの効果でヤツとの距離をはぐらかしていたのだろうけど。

(向こうも向こうで、似たような考えだったわけだ。策士策に溺れるなんて、らしくないなあ)
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