† of Ogre~鬼の心理
驚いたことに、仁の残留気配は動いているものもあった。

もしかすると、転がっている空き缶や、なにかの荷物、人の買い物袋、野良犬や、まさか風にまでマーキングしているのかもしれない。

たった数時間の、散歩のあいだに。

近代では屈指に入る、本人は認めたがらない高位の魔法使い・草薙仁。

その方面の業界では恐らく知らぬ者などいない、尊敬と侮蔑、畏怖と脅威を込められた異名・〝千約〟を冠する女。

彼女にかかれば、この街全土をひとつのマーキングで彩ること――

巨大な魔法陣に落とすことも容易いのかもしれない。

(敵じゃなくて、本当に助かるよ)

彼女が、僕や真輝ちゃんを敵に置かない理由も、同じようなところだろう。

たとえば、自慢するならば、僕には生半可な魔法魔術も効かない。

効果的なのは、首を落とすか心臓を抉り抜くこと。

およそ、どんな生物も耐えられない凶行でなければ、僕を殺すことはできない。

それもやはり、生半可な武器では、僕の体を貫けないときてる。
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