† of Ogre~鬼の心理
体術という面で言えば、仁は最弱だ。ただの人間と変わらない。

もっとも。

この僕も、野獣としての細胞が極限まで濃縮されている存在には、敵わない。

本気で相対すれば、僕の牙が彼女の首筋を噛むよりも早く、彼女の全身凶器が僕を打ち砕くだろう。

彼女・東城真輝は、それだけの力を、たった十六歳の体に秘めている。

驚いたことに、東洋生まれの存在である彼女は、今の力をもってなおまだ、未成熟であるらしい。

命が発生した瞬間からほぼ完成された存在である僕らの種族では考えられない、経験とは違うまさしく成長を、彼女らの種族は生涯継続していく。

恐るべき、血族の昇華能力だ。

が、そんな彼女も所詮は、いややはり、『十六歳の少女』に過ぎない。

東城真輝も、卓越からさらに超越を見い出す仁には敵わない。

どれだけ凶暴性と身体能力を向上させても、その爪も牙も届かなければ意味がない。

仁なら、相手に一切触れずして倒すなどまさに理想、もとい、基本だろう。
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