† of Ogre~鬼の心理
長い永い時間が、僕にはある。

いろいろなものが消えて、現れて、風化して、新設されて、変化に変化を重ねてきた。

しかし、僕は今、思い出の中のあの時から、今までも生きている。

去ったものは戻らないし、僕は僕でしかない。

なら僕は、僕として約束くらいは守らなくてどうする?

それが、僕の生きる誠意というものだし、僕の理想。

警察という仕事に就いているのも、なかば、その誠意によるものなのだから。

仁と真輝ちゃんの気配は、揃って家だ。

ヤな予感に急かされ急かされ、大慌てで二階ベランダに取りついた僕は、

「うわあ!?」

「!? 仁!」

の悲鳴で、脳天を叩かれたように青ざめた。

なにか、起こったのか!?

声は仁の部屋からだが――彼女の部屋には結界がある。

内からはともかく、外からは彼女以外にこのドアは開けられない……!

「仁、どうした仁!」

拳で叩くドアの向こうに、仁と真輝ちゃん、そして二人のものじゃない混雑した気配がある。

――と、その混雑気配が、ごっそり消えた。

ともすれば、結界で塞がれていたドアが、ガチャリと開く。
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