† of Ogre~鬼の心理
余談になるのだが――
ファミレスへ行く前に、あの横柄な仁が珍しく肩を落として、あるものをリビングへ持ってきた。
「アル、悪い」
と差し出したのは、ネクタイを除いた、彼のスーツ一式。
白いシャツには朱色がにじみ、黒いスーツも、普通とは違う意味で濃くなっていた。
そのスーツを見て、そういえば仁は多分に血を流していたこと、それが服に染み込んでいたことを、まったくいまさらのように思い出す。
血まみれのスーツを受け取り、
「これ……」
アルの顔が妙な理由から、蒼白とする。
クン、と彼の鼻が鳴った。瞳が少し、キラキラしてもいた。
「仁、僕のご飯、これでもいいかな?」
「バっ、おま、人の血ぃ嬉しそうに嗅いでるんじゃねぇよ! しかも、人の着たもの抱き締めてるなんて、なんか変態臭いぞ!! 気色悪いっ!」
「いやでも、だって、魔法使いの血なんてめったには――!!」
「うるせえーっ! さっさとメシ食いに行くぞ!!」
そんな無意味な小競り合いがあったことは、そう、だからまったくの、余談だ。
ファミレスへ行く前に、あの横柄な仁が珍しく肩を落として、あるものをリビングへ持ってきた。
「アル、悪い」
と差し出したのは、ネクタイを除いた、彼のスーツ一式。
白いシャツには朱色がにじみ、黒いスーツも、普通とは違う意味で濃くなっていた。
そのスーツを見て、そういえば仁は多分に血を流していたこと、それが服に染み込んでいたことを、まったくいまさらのように思い出す。
血まみれのスーツを受け取り、
「これ……」
アルの顔が妙な理由から、蒼白とする。
クン、と彼の鼻が鳴った。瞳が少し、キラキラしてもいた。
「仁、僕のご飯、これでもいいかな?」
「バっ、おま、人の血ぃ嬉しそうに嗅いでるんじゃねぇよ! しかも、人の着たもの抱き締めてるなんて、なんか変態臭いぞ!! 気色悪いっ!」
「いやでも、だって、魔法使いの血なんてめったには――!!」
「うるせえーっ! さっさとメシ食いに行くぞ!!」
そんな無意味な小競り合いがあったことは、そう、だからまったくの、余談だ。