† of Ogre~鬼の心理
仁の表情は相変わらず長い前髪の内側でわかりはしないが、ならばと私は訊ねた。

「仮にアルの感知したそれが事実だとして、なにか心当たりはないの?」

「心当たりといってもな……ううむ……ないことはないが――いや、だが……あ~……」

その言い淀みは、もったいぶっているとはまた違うもの。

仁は、たしかに博識だ。が、博識だからこそ、様々な方面からの可能性が彼女の頭の中で犇めき合って、これだと断定できる要素に絞り込めないことがあるそうだ。

逆に、これだという予想がついたとしても、それが彼女の中で納得がいくものでないと、答えるのを渋る。

他人からまったく無意識に堅実な答えを期待されるというのも、大変な苦労というわけだ。

「ややずれるかもしれんが、たとえ話なら、してやれないでもないぞ」

と、仁は言った。

してやらないもなにもない。

私もアルも、無言でその先を促す。
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