† of Ogre~鬼の心理
一口、仁は冷やを飲んだ。

トントン拍子に会話をするアルと違い、話をする前に喉を潤したり、一拍動作を入れるのは、彼女のくせだろう。

「ある日、どこかの村の話だ。ひとりの少年が同時に違う場所で目撃された。ある人は少年が丘にいると言い、ある人は少年が風車の近くにいると言い、また別のある人は少年が湖のほとりにいると言った」

「不思議な話ね」

「だからしている。黙って聞け」

ついでに言うと、彼女は話を遮られるのが嫌いだ。

なんでも、質問はあとから受け付ける方針らしい。

私は黙った。

「しかし、実際にその少年に問い詰めてみたところ、彼はこう言った。『その日はずっと家にいて、外出などしていない』――村人は当然、混乱した。つまり少年とは違う、しかし同じモノが何人もいたということになったからだ」

「それが、ヤツかな?」

「さあ。だから断定はできんし、ただのたとえ話だ」

アルの言葉に、仁が肩をすくめる。

アルの言葉は受け入れられるのは、彼が話に合いの手を入れるのが上手いからだ。
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