† of Ogre~鬼の心理
店を出ようとした彼女は、連れが払うので、と店員に断ってから、夜の街へ紛れた。
外の、切れかかっている電灯の下を歩いていくのが、見えた。
そのとき街灯に、ささ、とマジックで『落書き』をしているのも。
仁がいなくなり、こうして人あらざる者同士になると、なぜか、暗い雰囲気にしかならない。
「早く片付くといいわね」
目は手元のパンに向けたまま、言った。
「騒動が長引くのは好みじゃないでしょう? ひとつやふたつじゃ、語れない理由で」
「うん。まあね」
と、私がパンを噛み千切っている間に、答えが返ってくる。
「彼はこういうのを嗅ぎ付けるのが上手いからね。できるだけ早く普段の生活に戻ってくれないと、見つかるかもしれない。今は世界の裏側か、『狭間』の彼方にいることを祈るよ」
それはいつもの穏やかな口調、表情だったけれど、なんとも言いがたい、渋く苦いものだった。
彼も意図していないくらいかすかにしかめられている眉が、そのなによりの証拠だろう。
外の、切れかかっている電灯の下を歩いていくのが、見えた。
そのとき街灯に、ささ、とマジックで『落書き』をしているのも。
仁がいなくなり、こうして人あらざる者同士になると、なぜか、暗い雰囲気にしかならない。
「早く片付くといいわね」
目は手元のパンに向けたまま、言った。
「騒動が長引くのは好みじゃないでしょう? ひとつやふたつじゃ、語れない理由で」
「うん。まあね」
と、私がパンを噛み千切っている間に、答えが返ってくる。
「彼はこういうのを嗅ぎ付けるのが上手いからね。できるだけ早く普段の生活に戻ってくれないと、見つかるかもしれない。今は世界の裏側か、『狭間』の彼方にいることを祈るよ」
それはいつもの穏やかな口調、表情だったけれど、なんとも言いがたい、渋く苦いものだった。
彼も意図していないくらいかすかにしかめられている眉が、そのなによりの証拠だろう。