† of Ogre~鬼の心理
「いや、でも、それにしたって――ははっ……」

彼の失笑は、止まらない。

「君らに人間らしい生活を提供するのが僕の約束だけどね。その僕が一番、厄介なものを誘い寄せるロウソクになるなんて……申し訳ない限りだよ」

その失笑を、

「そういうのは、思っても言わないものよ」

私は叱った。

「なにかを利用するのは生きる上で当たり前のことでしょ。私も仁も、アナタを利用している。こっちも利用されているのを承知でね」

「……」

「だから負い目を感じることはないわ。それに騒動を早急に鎮圧したいのは、私だって一緒。逃亡者の気持ちはわかるし、いつまでもピリピリした空気に触れてるのって、心に悪いのよ。わかるでしょ?」

そう、私とアルは似ている。そしてアルは、言わば、闇そのものから逃げている。

私達のだれより人間らしい暮らし、人当たりのいい人格、確固とした生活力を持っているのもすべて、彼の精巧な隠れ蓑に過ぎない。
< 159 / 414 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop